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[PEASPOON]

[ピースプーン]・朝子のたべもの連載

関根朝子                                         

関根朝子(せきね あさこ)さんは東京都南麻布生まれ。イラストレーションを中心とした

デザインワークを手掛ける生業。(イラスト&エッセイから舞台美術デザイン制作まで大小

問わず)しかし食べ物数奇が高じてほぼ毎日築地市場に通っている。好きな言葉は、

「よくかんで食べよう」「医食同源」

「ピースプーン」の由来(第1回の概略から)かれこれ10年ほど前に、ロンドンの骨董市

を訪ね歩いた時に、目利きの友人がとある店先の商品の中から化粧箱をみつけました。その

中にはスプーンが6客、子犬が乳を飲むように並んで入っていたのです。豆を食べるための

用のお匙です。豆料理専用のお匙、から「ピー」+「スプーン」=「ピースプーン」とい

う、空気が抜けたような語呂のこころよさからずっと心の片隅に残っていたので、・・・

このタイトルになったのでした。

「ピースプーン」第4回ピースプーンのイラストカット             第1回からすべて読む→こちら


「少しとたくさん」

先日、知人に誘われ、数名と会食することになり、N町の古民家を改造した料理屋の

席を予約していただきました。その日は所用により、開始時刻からかなり過ぎての到

着になってしまい、時既に皆はメインディッシュが運ばれてくる進行状況。

  団体で同じセットを注文した手前、私の目の前には前菜が4種、サラダ、炊き合わ

せが遅ればせながら、と一度に運ばれてくる。うわ!こんなに食べられないなー、と

一瞬たじろぎながらも、目の前に集中することにした。早食いは身体によくないのは

承知の助ですが、その後メインの焼き物と赤だし、そしてかまど炊きご飯が順番を揃

えているのですから、追い込みをかけてしまうのでした。もちろんデザートだっていた

だきましたよ。鱈のお腹とはよく言ったものです。帰路では胸より尻より腹部が膨張し

ておりました。

 「会席」という形式のもてなし料理は、一皿の量が少ないコース料理を指しています。

欧風会席とか中華会席などとうたっている料理屋も少なからずあるわけですから、会

席は料理自体をさすのと同時に料理の寸法も指す現代語として浸透しているようです。

 さて、その会席サイズ、ようするに通常の形状より小振りな「プチ」サイズを最近コンビ

ニや料理屋で見かけるようになりました。小分け、小振り、食べ切り、等々、需要量の

目盛りの単位が少なめに移行しているのがわかります。現代人嗜好の思考として、

1種で満腹満足から、少しずつ数種満足へと勝手に定義づけられる程になっている

のが、そこかしこで見受けられます。飲み屋に行けば「地ビール3種飲み比べセット」

がお試し価格で提供され、コンビニでは、見慣れたパッケージの縮小サイズ商品で

ササッと小腹を満たすことができる。

 しかしこれが曲者で、馴染みの和菓子屋では、食べ切れないからと、今までの大きさ

より小ぶりを所望された常連の助言を受け、数種サイズ見直しをしたら、今度は食べ

易くなって今まで以上に食べ過ぎる、とまあ、勝手なご注意を受けるという困った報告

も受けております。皆さまもどうぞくれぐれも、見た目の大きさに振り回されないように、

食を楽しまれてくださいませ。私ももう少し早く料理屋に到着していれば、少しずつ運

ばれた料理を、するすると食べることができたということでした。

 

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